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食道・胃・十二指腸食道アカラシア

正常の食道の運動

口から食べ物が入るとのど(喉頭)を通って胸の中の『食道』という細長い、筋肉でできた管状の臓器を通り、『蠕動運動』と呼ばれる、食べ物を送り出すような収縮運動と重力によって胃へ運ばれます。一方、食道下部には下部食道括約筋(Lower esophageal sphincter; LES)が存在し、普段はきゅっと閉まって胃の内容物が食道へ逆流するのを防いでいますが、食べ物が胃へ送られる際には緩んで食道と胃の接合部が開き、スムーズに胃の中に流れていきます(図1)。

図1:食道の運動と動き

食道アカラシアにおける食道の運動とその病態

食道アカラシアは、この下部食道活約筋が緩むという機能が傷害され、食物が下部食道に止まったままで胃内に入らず、食道内に食物が貯留・停滞して食道が異常に拡張し、食道の蠕動運動も障害される病気です(図2)。『食べ物が飲み込みにくい』、『つかえた感じがする』、『吐いてしまう』などの症状が出現し、食道内に残った食べ物が逆流して口や鼻から出たり、寝ているときに逆流すると夜間に咳が出現したり、誤嚥を生じて肺炎を発症する危険や、括約筋が過度に収縮して『胸痛』を認めることもあります。

図2:食道アカラシア

食道アカラシアの疫学とリスク

この食道アカラシアはまれな病気で約10万人あたりに1人程度の頻度であり、現時点では原因はよくわかっていませんが、食道や下部食道活約筋の神経細胞の変性・減少やウイルス感染がその一因ではないかと言われています。ただ、長期間経過すると食道癌を発症するリスクが高く、食道アカラシアの患者さんの3~5%に発症するといわれており、そのリスクは正常の方の7倍から33倍ともいわれています。臨床症状だけでなく、このリスクも考慮に入れて治療選択を検討する必要があります。

食道アカラシアの診断

診断に際しては、上部消化管造影検査と食道内圧測定検査が必須であり、その他補助診断として上部消化管内視鏡検査やCT検査を行います。治療方針を決めるには、食道アカラシアの進行度を正確に把握することが重要であり、当院では上記の検査を組み合わせて詳しく診断します。

上部消化管造影検査

バリウムの食道内の停滞、時間経過によっても胃内に流入しないことの確認、食道の異常拡張と形態などを確認します(図3)。

食道内圧検査

食道アカラシアは食道の出口が詰まっている病気なので、当然食道の内腔の圧は非常に高くなります。それを調べて証明するのがこの検査です。鼻から内圧測定用の細い管を入れて嚥下をしていただきながら食道内の圧と蠕動運動の状態を測定します。当然、下部食道は開かず、食道内の圧も高く、口側から胃側への蠕動運動の移動はなく、時に異常運動が観察されるのが特徴です。

上部消化管内視鏡検査

補助診断の一つで、下部食道が開かない原因として食道癌などの腫瘍や食道炎や潰瘍などの炎症がないかを調べます。その上で、食道胃接合部の弛緩不全と食道内の食物の貯留を確認します。

CT検査

補助診断の一つで、食道胃接合部に腫瘍の有無や壁肥厚の有無を除外すると共に、食道の拡張状態を確認し、手術適応も想定して周囲臓器との関係をチェックします。

食道アカラシアの治療

治療方法は1. 内服薬治療、2. 内視鏡的治療、3. 外科手術があります。

内服薬治療

下部食道活約筋圧を下げる作用のあるカルシウム拮抗薬,亜硝酸製剤などを用いますが、あまり効果は期待できません。またカルシウム拮抗薬は降圧剤ですので血圧の低い方には使用できません。その他対処的に漢方薬(芍薬甘草湯など)を用いることもあります。

内視鏡的治療(バルーン拡張)

軽症の食道アカラシアに対して行われる治療で、内視鏡的に下部食道活約筋部をバルーンで広げて筋肉の一部を裂くことで食道の流れを良くする方法です。ただ、この治療は瘢痕化した筋肉を切り裂くだけで根本的な治療ではないために再度瘢痕狭窄きたす場合が多く、また繰り返し行うと下部食道活約筋周囲の炎症が起きて、もし手術療法が必要となった場合にはリスクが高くなるという報告もあります。以上のことから、近年低侵襲で根治的治療が行えるようになった外科治療(鏡視下手術)が早い段階から選択されることが多くなっています。

一方、2008年に新しい治療として内視鏡的筋層切開術(Per-oral Endoscopic Myotomy;POEM(ポエム))が昭和大学:井上晴洋教授によって開発され、良好な成績が報告されています。しかしこの治療法はまだ新しく、施行できる施設(関西では神戸大学、大阪市立大学、和歌山大学など)も限られていることや長期的な効果、予後などはまだわかっていません。さらに下部食道の筋肉を切開して通過障害を解除するものなので、通過が良好になると同時に胃液や胃内容物の食道への逆流が生じる『逆流性食道炎』の懸念も言われています。現時点では上記理由から当院では『POEM(ポエム)』は導入しておりません。

外科手術

現在もっとも確実な治療方法で、長期的な有効性についても多くの報告があります。いくつかの手術方法がありますが、当院では傷の少ない腹腔鏡手術を用いて、下部食道活約筋を含めた下部食道から胃噴門部の筋肉の一部を切開して通過障害を解除し、その後逆流を防止する目的で胃の一部を用いて食道に被いを作る腹腔鏡下Heller-Dor(ヘラー・ドール)法を採用しています(図4)。入院期間はおおよそ5-7日程度です。

図4:Heller-Dor(ヘラー・ドール)法

※食事が通りにくくなったと感じた場合、この食道アカラシアの以外に食道がんでも同じ症状がでます。このような症状があれば必ず放置せずにご相談ください。

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