2020年9月
近畿大学病院外科に、浸潤性膵管内乳頭粘液癌(IPMC)で通院歴のある患者さんへ
近畿大学病院外科では、以下の臨床研究を実施しています。ここにご案内するのは、過去の診療情報や検査データ等を振り返り解析する「後ろ向き観察研究」という臨床研究で、本学倫理審査委員会の承認を得て行うものです。すでに存在する情報を利用させて頂く研究ですので、対象となる患者さんに新たな検査や費用のご負担をお願いするものではありません。また、対象となる方が特定できないよう、個人情報の保護には十分な注意を払います。
この研究の対象に該当すると思われた方で、ご自身の診療情報等が利用されることを望まない場合やご質問がある場合は、下記の問い合わせ先にご連絡ください。
研究課題名
Invasive intraductal papillary mucinous carcinoma (IPMC)に対する術後補助療法の有用性に関する後ろ向き観察研究
研究責任者
近畿大学病院外科 准教授 松本 逸平
研究の目的
通常型の膵臓癌では、手術で切除した後に、再発予防を目的とした抗癌剤治療を行うこと(術後補助療法)で、膵臓癌患者さんの生存期間が延長することは既に証明されています。一方、浸潤性膵管内乳頭粘液癌(invasive IPMC)に対する術後補助療法の生存期間延長に関する有用性は証明されていません。
本研究は、浸潤性膵管内乳頭粘液癌(invasive IPMC)に対して、手術で切除した後に、術後補助療法を行うことで、再発の頻度を低下させ、生存期間延長につながるかを検討することを目的としています。本研究により、浸潤性膵管内乳頭粘液癌(invasive IPMC)に対する、術後補助療法の生存期間延長に関する有用性を証明できれば、浸潤性膵管内乳頭粘液癌(invasive IPMC)患者さんの生存期間延長に多いに貢献できます。
研究の概要
(1)対象となる患者さん
浸潤性膵管内乳頭粘液癌(invasive IPMC)の患者さんで、1996年1月1日から2018年12月31日までの期間中に、手術による切除を受けられた方
(2)利用させて頂く情報
この研究で利用させて頂くデータは、性別、年齢、手術術式、病理診断、術後補助療法を受けられたかどうか、術後補助療法を受けられた場合の化学療法の種類、治療開始までの期間と治療期間、再発確認日、再発部位、最終診察日に関する情報です。
(3)方法
この研究は、日本膵臓学会のプロジェクトとして行います。中央研究機関は、和歌山県立医科大学外科学第2講座で、約30施設の日本の施設が参加します。
手術により切除した後に術後補助療法を受けられた浸潤性膵管内乳頭粘液癌(invasive IPMC)の患者さんと受けられなかった患者さんの再発頻度と生存期間を比較し、浸潤性膵管内乳頭粘液癌(invasive IPMC)に対する術後補助療法の有用性を検討します。
本研究終了後、研究より得られた試料・情報等は匿名化し、論文発表から試料は5年保存し、情報は10年保存します。
個人情報の取扱い
利用する情報からは、患者さんを特定できる個人情報(住所・名前など)は削除し、患者さんとは無関係な番号を付して匿名化した上で、上述の情報のみを残したデータを用いて解析します。研究用に取得した情報は共同研究機関(和歌山県立医大 研究事務局)以外の機関への提供は行いません。情報はパスワードでロックされた電子メールで提供します。
また他の研究などへの情報の二次利用はしません。また、研究成果は学会や学術雑誌で発表されることがありますが、その際も患者さんの個人情報が公表されることはありません。
ご自身の情報が利用されることを望まない場合
臨床研究は医学の進歩に欠かせない学術活動ですが、患者さんには、ご自身の診療情報等が利用されることを望まない場合、これを拒否する権利があります。その場合は、下記までご連絡ください。研究対象から除外させて頂きます。なお、研究協力を拒否された場合でも、診療上の不利益を被ることは一切ありません。
共同研究機関
和歌山県立医科大学 第2外科 廣野誠子、川井 学、岡田健一、山上裕機
第2内科 北野雅之
京都第一赤十字病院 病理診断科 柳澤昭夫
愛知県がんセンター中央病院 外科 清水泰博
イムス札幌消化器中央総合病院 消化器内科 丹野 誠志
大阪国際がんセンター 消化器外科 高橋 秀典
大阪大学 消化器外科 江口英利
JA尾道総合病院 消化器内科 花田 敬士
香川大学 消化器外科 鈴木 康之
鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 又木 雄弘
関西医科大学 外科 里井壮平
がん・感染症センター 都立駒込病院 肝胆膵外科 脊山泰治
九州大学 臨床・腫瘍外科 中村雅史
杏林大学医学部 消化器・一般外科 鈴木 裕
国際医療福祉大学三田病院 消化器センター外科 羽鳥 隆
国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科 肱岡 範
国立がん研究センター東病院 肝胆膵外科 杉本 元一
滋賀医科大学 外科 谷 眞至
静岡県立静岡がんセンター 消化器外科 上坂 克彦
自治医科大学 消化器一般移植外科 佐田尚宏
自治医大さいたま医療センター 一般消化器外科 渡部文昭
順天堂大学医学部 消化器内科 伊佐山浩通
千葉大学 臓器制御外科 三島 敬
手稲渓仁会病院 消化器内科 潟沼朗生
東京医科大学 消化器外科・小児外科 土田明彦
東京医科大学茨城医療センター 消化器外科 鈴木修司
東京女子医科大学 消化器内科 清水京子
東北大学 消化器外科学 海野倫明
獨協医科大学 第二外科 青木 琢
富山大学 消化器・腫瘍・総合外科 藤井 努
奈良県立医科大学 消化器・総合外科 庄 雅之
名古屋大学 消化器外科 小寺泰弘
兵庫県立がんセンター 消化器外科 藤野泰宏
弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座 袴田 健一
広島大学 第1外科 上村健一郎
藤田医科大学医学部 消化器外科学講座ばんたね病院外科 浅野之夫
福岡大学筑紫病院 消化器内科 植木敏晴
北海道大学 消化器外科II 平野 聡
三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科 水野修吾
山口大学 消化器・腫瘍外科学 永野浩昭
横浜市立大学 消化器外科 遠藤 格
問い合わせ先
大阪府大阪狭山市大野東377-1
近畿大学病院 外科 担当医師 里井 俊平
TEL:072-366-0221 FAX:072-367-7771
E-mail:s-satoi@surg.med.kindai.ac.jp
食道癌患者における術前後の身体組成に影響を及ぼす因子についての研究 ―後ろ向き観察研究―
研究の対象
2016年1月1日~2020年6月30日までの期間に近畿大学病院外科において、食道癌切除・再建術を実施し根治切除が可能であった40歳以上の胸部食道癌患者。
研究目的・方法
食道癌患者の手術前後において、どのような身体組成項目がどの程度変化しているか定量的に明らかにすること。これまでの食道癌患者に対する手術前後の身体組成の変化について定量的に明らかにすることができれば、今後手術を行う食道癌患者に対して栄養療法だけではなく筋力トレーニングに重点を置いたリハビリテーションの併用といった新しい介入方法の検討材料としたい。2016年1月1日~2020年6月30日までの期間に近畿大学病院外科において、食道癌切除・再建術を実施し根治切除が可能であった40歳以上の胸部食道癌患者を対象にデータ収集を行い、解析を行う。
研究に用いる資料・情報の種類
情報:
- 患者背景(年齢、性別、身長、体重、BMI、病歴)
- 術前治療(腫瘍の部位、Stage分類、投与薬、化学療法・放射線療法)
- 術式(手術手法、食道切除範囲、再建方法、リンパ郭清領域、胃瘻造設有無)
- 手術成績(遺残の有無、手術時間、麻酔時間、出血量、輸血量、呼吸器装着時間、ICU滞在日数)
- 術後経過(歩行獲得日数、在院日数、再入院回数、1年生存の有無)
- 術後合併症のGrade(Clavien-Dindo grade)
- 呼吸機能検査: 肺活量(VC)、最大吸気量(IC)、努力性肺活量(FVC)、1秒量(FEV1.0)、%FEV1.0
- 栄養指標 Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)、Controlling Nutritional Status(COUNT)
- Perfoemance Status(日常生活動作の制限の度合い)
- 嚥下機能(Functional Oral Intake Scale、兵頭スコア、AsRスコア、食事摂取量)
- CT画像(全皮下脂肪量、全体内脂肪量、体内脂肪率、内臓脂肪率、大腰筋体積量、第3腰椎レベルでの皮下脂肪面積、内臓脂肪断面積、大腰筋面積)
外部への資料・情報の提供
本学単独研究のため、なし
研究組織
- 研究責任者
- リハビリテーション医学 臨床教授 東本 有司(医師)
- 研究分担者
- リハビリテーション部 水澤 裕貴(理学療法士)
- 研究分担者
- リハビリテーション部 白石 匡(理学療法士)
- 研究分担者
- リハビリテーション部 田村 友美(言語聴覚士)
- 研究分担者
- 外科学 主任教授 安田卓司(医師)
- 研究分担者
- 外科学 医学部講師 白石 治(医師)
- 研究分担者
- 外科学 医学部講師 加藤 寛章(医師)
- 研究分担者
- 外科学 助教 百瀬 洸太(医師)
- 研究分担者
- リハビリテーション医学 主任教授 福田寛二(医師)
お問い合わせ先
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。なお、情報の利用を拒否しても不利益は伴いません。
照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
〒589-8511 大阪狭山市大野東 377-2 Tel:072-366-0221 内3728
近畿大学病院 リハビリテーション医学
職名:臨床教授 氏名:東本有司
胸部食道切除後の消化管再建経路長に関する後方視的研究について
研究対象
2012年11月から2016年3月までに近畿大学病院で手術を施行された食道癌症例が対象です。
本研究の意義・目的
胸部食道癌に対する根治手術において胸部食道は周囲のリンパ節を含む脂肪組織ごと一塊に切除して摘出されます。つまり、切除後は一旦頸部食道と腹部の胃に泣き別れになった状態になります。この空間的な欠損を腹部の臓器、通常は胃を使って細い管:胃管を作成して頸部まで挙上し、頸部食道と吻合を行います。したがって同じ腹腔内にある消化管を吻合する腹部手術とは大きく異なり、距離的なハンディを克服する必要があります。全国がんデータベース(NCD)でも吻合部が破綻する縫合不全率は13%強と報告されており、この対策が重要な課題です。消化管を吻合する場合の治癒のポイントは、再建に用いる臓器の血流と吻合部への緊張の程度です。血流が良好で、吻合部にも緊張がかかっていなければ良好な治癒が期待できますが、そのいずれかが欠けると吻合が破綻する縫合不全を発症する率が高くなります。つまり、食道の再建においては胃を使って如何に長い胃管を作成するかが一つのポイントです。挙上する胃管は腹部からの血管のみでその先端まで栄養せざるを得ません。したがって、長い胃管を作ることができればより肛門側で血流の良い場所で吻合することができますし、長さに余裕があれば吻合部にかかる緊張も緩和して治癒を促進させることができます。もう一つのポイントは、限られた長さを有効に使うためにできるだけ短い経路で挙上することです。胃管を挙上する経路には3つの経路があります。元々食道があった場所を挙上する後縦隔経路、胸骨の裏側に新たなトンネルを作成して挙上する胸骨後経路、そして胸壁の正中皮下にトンネルを作成して挙上する皮下経路です。それぞれに利点・欠点はありますが、縫合不全に関していうと最短距離の経路で挙上するのが最も有利で、縫合不全率が低くなると予想されます。一般常識として後縦隔経路が最も短いといわれていますが正確なデータはありません。ご遺体で測定した、あるいは術中に測定したという報告が僅かにありますが一定の見解はなく、胸骨後経路の方が短いという報告もあります。そこで再建経路長を明らかにすることで距離的な面での最適の再建経路を確立し、食道切除後の胃管再建術の標準化を図ることができればと考えています。これにより縫合不全率が低下すれば、患者さんの安全性および術後の負担は大きく改善され、医師および看護師の負担も軽減され、更には在院日数の短縮や処置に要する物品の削減など医療経済的にも大きな利点があると考えられます。実際我々は今回研究対象となる2012年11月から2016年3月までの間、術中に3つの経路長を測定し、最短の経路を用いて再建することで手術の安全性の向上を図る戦略をとってきました。その時の結果は一般的な常識とは異なり、圧倒的に多くの症例で最短の再建経路は後縦隔経路ではなく、胸骨後経路であるという結果でした。我々はこの結果とその他の術式の工夫を追加することにより縫合不全率は1%台までに改善することができています。しかし、前述の通り未だ世の中では縫合不全は大きな合併症の一つで、高い施設では20%を越える縫合不全率の報告もあります。広く全国、そして世界に正確な情報を提供し、患者さんの安全性を確保することは最重要課題であり、その社会的意義は極めて大きいと考えますので、今回改めて過去のデータを整理し、世の中に報告する予定です。
研究方法
術中に再建経路長を測定し、最短の経路を再建経路として選択するという手術選択を行っていた2012年11月から2016年3月までの間に近畿大学病院で手術を施行された食道癌症例を対象とします。新たに取得するデータは一切なく、全て電子カルテ内の診療録および手術記録、それと上部消化管外科の食道癌データベース内にあるデータを利用するのみで、収集された情報を基にデータベースを作成して集計を行い評価します。情報の解析は、後述する研究代表者と研究分担者のみが行なうもので、それ以外が情報の解析に関与することはありません。研究実施予定期間は、近畿大学医学部倫理委員会で承認された後2年間です。
研究に用いる情報の種類
- 診療録から抽出される項目
- 年齢、性別、身長・体重、各再建経路長、検査データ、画像データ、病理データ、既往症、併存疾患、食道癌の状態(主腫瘍の局在部位、リンパ節転移の部位および転移個数に関する初診時の臨床評価情報ならびに術後病理所見情報、臨床的および病理学的進行度)、治療内容(術前化学療法、術前または根治的化学放射線療法の内容および手術術式)、術後合併症とそれに対する治療に関する情報。
- 手術記録から抽出される情報
- 術式、再建経路、手術時腫瘍進行度、切除度、吻合法、手術所見。
- 上部消化管食道癌データベースから抽出される情報
- 各再建経路長、術後合併症の有無・種類。
個人情報の取り扱いについて
個人情報に関わるデータ(名前・生年月日・ID番号)はすべて匿名化され、いかなる個人情報も院外には漏出されないように管理します。プライバシーに関することが公表されることは一切ありません。また、この研究は近畿大学医学部倫理委員会の審査・承認ならびに近畿大学医学部長の許可を得て行なう近畿大学医学部外科学教室の単独研究であり、情報は近畿大学医学部以外に提供されません。
情報の管理責任者
竹山宜典 近畿大学医学部外科学教室肝胆膵部門 主任教授
ご質問や研究に対する拒否の自由
本研究に関しましてお聞きになりたいことがありましたらいつでも担当医もしくは下記問い合わせ先までご連絡ください。また、本研究に情報を提供したくない場合はお申し出ください。お申し出いただいても今後の診療等に影響はありません。ただし、既に論文発表や学会発表にて公表されたデータとなっている場合には撤回はできません。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申し出ください。また、また情報が本研究に用いられることについてご了承いただけない場合は、研究対象としませんので、下記問い合わせ先までお申し出ください。
研究代表者・責任者及びお問い合わせ先
- 研究代表者および責任者
- 安田卓司 近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門 主任教授
- 研究事務局(お問い合わせ先)
- 安田卓司 近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門 主任教授
〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2 近畿大学医学部外科学教室
TEL: 072-366-0221 / Fax: 072-367-7771
研究分担者
白石 治 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:医学部講師
加藤寛章 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:医学部講師
百瀬洸太 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:助教
平木洋子 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:助教
安田 篤 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:医学部講師
新海政幸 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:講師
木村 豊 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:准教授
今野元博 所属:附属病院通院治療センター 職名:教授