肺・胸部自然気胸
気胸とは
胸壁の内面と肺の表面はひとつづきの胸膜で覆われて一つの空間をつくっており、これを胸腔と呼びます。ここに何らかの原因で空気がたまった状態が気胸で、胸痛や呼吸困難などを伴うことが多いです。気胸の多くは肺表面のブラ・ブレブ(気腫性肺囊胞)と呼ばれる弱く膨れた肺が破れて発生します(原発性自然気胸)。肺気腫、感染、腫瘍、肺リンパ脈管筋腫症などの病気を背景に発生することや、月経随伴性気胸など特殊な原因による気胸(続発性気胸)もあります。外傷によって発生した場合は外傷性気胸とよばれます。
気胸の重症度
下記のように3段階に分類されます (日本気胸・嚢胞性肺疾患学会)
- 軽度:肺の頂部が鎖骨より上にあり、少し肺がしぼんでいる状態
- 中等度:軽度と高度の中間程度/li>
- 高度:肺の完全にしぼんでいる状態もしくはこれに近いもの
気胸の治療
軽度の気胸は安静で軽快することもありますが、中等度以上の気胸は、治療を要します。治療は保存的治療(手術以外の治療)と手術療法に分けられます。保存的治療には、局所麻酔下に胸腔内に針を刺して貯まった空気を一時的に抜くか、チューブを留置して持続的に空気を吸引する胸腔ドレナージがあります。チューブから薬や血液を注入して胸膜を癒着させる癒着療法を併用することもあります。
手術適応
- 保存的治療で改善しない気胸
- 再発を繰り返す気胸
- 両側気胸
- 血気胸(気胸に出血を合併している状態)
その他、日常生活・社会的事情により手術が適当と判断された場合です。
手術方法
全身麻酔下で手術を行います。胸にあけた2-3箇所の小さな穴から胸腔鏡や手術器具をいれて行う胸腔鏡下手術を基本とします。胸腔鏡下にブラやブレブを切除します。当科では、ブラをソフト凝固という電気メスの一種で焼いてから切除する方法を行っています(図1)。以下の場合は開胸手術とすることもあります。
- 胸腔鏡下手術では手術する側の肺をしぼませる必要がありますが、片肺呼吸で手術中の良好な換気を維持できない低肺機能の場合や、肺気腫などで肺がしぼまない場合。
- 肺気腫が強く、胸腔鏡下手術では困難な場合
- 胸膜癒着が強く、手術をする空間が確保出来ない場合
- 肺からの空気漏れや出血がきわめて著しい場合
図1 ソフト凝固でのブラ焼灼前と焼灼後の様子
再発について
気胸は手術を行っても、再発してしまうこともあります。頻度しては胸腔鏡下手術で5〜10%、開胸手術で0.5〜3%の頻度で再発すると報告されています。