原発性肺癌
本邦における臓器別がん死亡数 第1位肺がん
「がん(癌)」とは何なのか?
私たちの体では、正常な細胞が規則正しく分裂し、古い細胞が新しい細胞に置き換わることで新陳代謝が保たれています。しかし、何らかの原因で細胞が変異し異常な細胞になると、制御を失って無秩序な増殖を続け、異常な細胞の塊(腫瘍)=がんを形成します。 がん細胞は周囲の組織へ広がる浸潤や、血液・リンパの流れに乗って他の臓器へ移動する転移を起こし、臓器の正常な働きを妨げます。
肺がんとは、肺の細胞から発生したがん(原発性肺がん)を指します。これに対し、他の臓器で発生したがんが肺に転移したものは転移性肺腫瘍と呼ばれ、原発性肺がんとは区別されます。
原発性肺がんは大きく
- 小細胞肺がん
- 非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん など)
の2つに分類されます。両者は細胞の性質や悪性度、治療に対する反応性が異なるため、適切な治療選択が重要です。 非小細胞肺がんはさらに、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなどの組織型に分けられます。
肺がんの症状としては、咳、痰、血痰、胸痛などがありますが、初期には症状が乏しいことも多く、健康診断や胸部レントゲン検査やCT検査で偶然発見されるケースが少なくありません。
また、肺がんは日本における臓器別がん死亡数の第1位であり、2023年の人口動態統計では年間約7万6千人が肺がんで亡くなっています。男女ともに死亡数が多く、特に男性ではがん死亡の約4人に1人が肺がんによるものです。 高齢化の進行や喫煙歴、遺伝的背景に加え、近年は非喫煙者の腺がんの増加も指摘されており、肺がんの病態は多様化しています。
肺・気管・気管支・肺胞の構造と役割
肺がんの説明に入る前に、まず私たちが呼吸を行う臓器である肺について簡単に触れておきます。肺は肋骨に囲まれた胸腔の中に位置し、胸膜という薄い膜に包まれた、スポンジのように柔らかい臓器です。呼吸に合わせて膨らんだり縮んだりする様子は、風船にも例えられます。鼻や口から吸い込んだ空気は、喉から気管 → 気管支へと流れ、左右の肺へと届けられます。左右の肺は大きさがやや異なり、右肺:左肺=約55:45で右肺の方が少し大きくなっています。 肺はさらに「肺葉(よう)」と呼ばれる単位に分かれ、
- 右肺:上葉・中葉・下葉の3葉
- 左肺:上葉・下葉の2葉 で構成されています。
各肺葉のおおよその容積は、
- 右上葉20%、中葉10%、右下葉25%
- 左上葉25%、左下葉20% とされています。 さらに肺葉はより小さな「肺区域」に分かれ、右肺10区域、左肺9区域から成ります。これらの構造は、術後に残る肺容量の予測や切除範囲の決定において非常に重要です。
肺の主な役割はガス交換です。吸気によって取り込まれた酸素は、肺の末端にある肺胞(約3億個、直径0.1mm)で血液に取り込まれ、呼気では体内で生じた二酸化炭素が排出されます。肺胞は加齢とともに徐々に減少していきます。
空気の通り道である気管・気管支は、単に空気を運ぶだけでなく、粘液を分泌してほこりや細菌を捕捉し、痰として排出する防御機能も担っています。 このように肺は、呼吸と防御の両面で私たちの生命維持に欠かせない働きをしています。

