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食道・胃・十二指腸周術期治療 予後改善をめざす

手術は根幹の治療ですが、その治療後の予後改善を最大限に図るためには、患者さんの病態や体調にあわせて、さまざまな補助療法を組み合わせて、治療していくことが大切です。

術前化学療法

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Stage II/IIIの胸部食道癌(扁平上皮癌)には術前化学療法を行うのが日本の標準治療です(NACといいます)。
以前は5FU+シスプラチンCDDP(CF療法 奏効率35%)によるNACが標準治療でした。
2010年から、近畿大学は大阪大学と共に、CF療法にドセタキセル(DTX)を加えた"DCF療法"を術前化学療法として開始し、臨床試験で60%という高い奏効率をもって予後を改善するという有用性を確認しました。(Shiraishi O et al. Oncology. 2017; 92:101-108 Yamasaki M et al. Ann Oncol. 2017 1;28:116-120 )

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術前、全国的な臨床試験(JCOG1109)で、CF療法とDCF療法、さらに欧米の主流である術前CRTを比較したところ、DCF治療が有意性が証明され、DCF療法が現在の日本の推奨される術前化学療法となりました。 (Kato K at.al. Lancet. 2024 6;404:55-66.)

DCF療法 (扁平上皮癌)

「ドセタキセル」を1日目に90分 点滴
「シスプラチン」を1日目に60分 点滴
「5-FU」 を1~5日間、持続静脈点滴します。
3週間がひと区切り(1コース)です。
2~3コース行い、効果を評価し、根治手術を予定します。

FOLFOX療法 (扁平上皮癌、腺癌)

「オキサリプラチン」を1日目に120分 点滴
「5-FU」 を46時間、持続静脈点滴します。
2週間がひと区切り(1コース)です。
2~4コース行い、効果を評価し、根治手術を予定します。
高齢な方、腎機能に不安がある方には、副作用軽減を考慮し、DCFではなくこの治療を選択します。治療の要る副作用の頻度はかなり低くなりますが、奏効率は35%程度です。

DOS療法 (腺癌)

「ドセタキセル」を1日目に90分 点滴
「オキサリプラチン」を1日目に120分 点滴
「S-1」 を1~14日間、内服します。
3週間がひと区切り(1コース)です。
3コース行い、効果を評価し、根治手術を予定します。
 食道腺癌、食道胃接合部癌の患者さんに使用します。外来で使用することができるメニューです。副作用の頻度はわりと低く、奏効率は60%程度です。

抗がん剤の副作用

白血球減少、貧血、血小板減少、発熱、下痢、胃潰瘍、吐き気、嘔吐、食欲不振、脱毛、全身倦怠感、口内炎、末梢神経障害、色素沈着、皮膚炎、関節痛、肝臓障害、腎機能障害、過敏反応、血栓症、不妊、二次的発がん(白血病)

DCF化学療法で特に注意が必要な副作用(グレード3-4)

好中球減少(90%)、発熱性好中球減少症(39%)、下痢(15%)、血栓症(5%)、血小板減少(1%)、腎機能障害(1%)、低ナトリウム血症(1%)

化学放射線療法

Stage Iで化学放射線療法(CRT)を希望された方、進行癌で気道や大動脈浸潤の疑いがある方が対象となります。

CF-RT

標準的な治療です。放射線照射に抗癌剤(5FU+CDDP)投与をあわせます。4週間サイクルで2回投与を予定します。術前を想定した照射は1.8Gyの23回 (41.4Gy)です。根治的治療では1.8Gyの28回照射(50.4Gy)の治療を5-6週間で行います。治療効果は徐々に現れ、治療終了1ヶ月後に効果判定を行います。

DCF-RT

より強力な治療効果を求めて、CF療法ではなく、新しいDCF療法を併用する試みです。CF-RTより高い効果が報告されています。放射線照射にDCF化学療法をあわせます。1コースの分量はDCF化学療法単独時の約半量の投与となります。3週間サイクルで3コースを予定します。1.8Gyの28回照射(50.4Gy)、6週間の治療期間を行います。

放射線の副作用は皮膚炎、食道炎、疼痛、肺臓炎、胸水貯留、心筋炎、心嚢液貯留心機能低下など。治療後何年も経ってからの晩期合併症に注意が必要です。

根治放射線治療後のサルベージ手術について

50Gy以上の放射線療法の後の手術をサルベージ手術(救済手術)と呼びます。切除不能や手術治療を希望されなかった場合には根治目的で60GyのCRTを行うことが一般的でした(近年は50.4Gyが標準量となっています)。消失した癌病変が再発した場合や、他臓器浸潤が解除された場合、根治切除の介入を考慮することがあります。これがサルベージ手術です。通常の手術と比べて放射線の影響で組織にダメージがでており、手術も困難で、術後の合併症(肺炎や縫合不全、高い死亡率)にとても注意が必要です。しかし、切除介入で根治が見込める場合、リスクはありますが、治療を行う価値があり、当院ではこれまで多くのサルベージ手術を行ってきました。(Shiraishi O, et al. Ann Surg Oncol. 2021 28:6366-6375)

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