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食道・胃・十二指腸頸部食道癌 ~声を残す手術 喉頭温存手術~

解剖学的に頸部食道は咽頭からつながる約3cmの食道で前方に喉頭/気管と密着しており、ここに癌ができると、癌から距離が取れない、癌が気管浸潤する、嚥下障害が出るなどの理由で、喉頭も一緒に切除することが一般的で、ゆえに標準術式は、咽頭喉頭頸部食道切除とされています。しかし癌治療のためとはいえ、声を失うことは患者さんにとって可能なら回避したい大きなテーマです。
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近畿大学では極力、喉頭を温存して癌を切除することを試みます。その場合は、いかに癌の根治性と嚥下機能保持を両立させるかが大切になります。

  • 癌の根治性

    癌の位置、浸潤程度で喉頭温存できるか決まります。食道入口部直下なら可能性あり、後壁なら咽頭に一部癌が浸潤していても可能性はあります。手術の技術と工夫で温存できる限界を広げて実現します。ただし気管浸潤がある場合は温存手術適応外となります。(東京医学社 消化器内視鏡 28 115-121 2016年1月)

  • 嚥下の機能温存

    愛護的な手術、持続神経モニタリングで反回神経麻痺の回避、前頚筋を切離して喉頭挙上障害の回避、機能的な再建デザインの実現。化学放射線療法は良い治療ですが、筋委縮を伴うためマイナス影響にはなるため、慎重に適応決めます。

頸部食道癌の治療戦略

内視鏡とCT検査、患者さんの状態から喉頭温存の可能性を見極めます。

  • 進行癌の場合、少しでも喉頭温存の可能性ありなら、まず化学療法で腫瘍縮小、全身的な制御を狙います。そして喉頭温存頸部食道切除を行います。
  • 手術で喉頭温存適応なしなら、化学放射線療法で、非切除癌消失を狙います。進行癌の場合は癌消失率30-40%です。癌が消失したなら経過観察。遺残、再発なら、咽頭喉頭頸部食道摘出術を行います。

喉頭温存頸部食道切除術

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両外側頸部のリンパ節郭清のちに、声を司る反回神経周囲リンパ節郭清、原発巣の剥離を行います。反回神経リンパ節は転移が多い場所で細い神経のみを残して郭清しますが、神経麻痺を回避するため、特殊な気管内挿管チューブを使用し、「反回神経モニタリング」で神経パルスを確認しながら手術を進めます。そして喉頭温存手術の秘訣の一つ、最大限の切離マージンの確保です。イメージ図のごとく輪状咽頭筋の固定を切離して食道と気管を剥離すると、通常の切離限界より1㎝近くマージンがとれます。また癌が後壁なら咽頭に切り込んで切除することも考慮できます。
癌を切除したあとは、小腸を採取して頸部に移植して消化管を再建します(遊離空腸再建)。移植にはに血行再建が必要で、形成外科医師と協力して頸部の血管と空腸の血管をつなぎ合わせて血液環流を実現します。(金原出版 手術 68(4) 367-375 2014年3月、南江堂 外科 82 (13), 1297 - 1302 2020年)
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