肝臓・胆道・膵臓:臨床研究について非外傷性緊急膵頭十二指腸切除の国際多施設共同後方視的研究について
研究課題名「非外傷性緊急膵頭十二指腸切除の国際多施設共同後方視的研究」
【研究機関名及び自機関の研究責任者氏名】
この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示すとおりです。
研究機関 近畿大学医学部 外科 肝胆膵部門
研究責任者 松本 逸平
担当業務 データ取得および提供
1.研究の対象
西暦2010年1月から西暦2023年10月まで施行された非外傷性緊急膵頭十二指腸切除を施行された全症例。下記選択・除外基準をもとに各施設で症例の登録を行い、対象症例としての適格性については事務局で最終判断を行います。
2.研究期間
医学系研究倫理審査委員会承認日~西暦2026年12月31日
3.研究の目的
非外傷性因子で緊急膵頭十二指腸切除を要した症例の特徴および術後短期成績を明らかにすることです。
4.研究の背景および意義
膵頭十二指腸切除は消化器外科手術の中でも合併症が多く、特に膵液瘻やそれに起因する膵切除後出血は高い死亡率が報告されています。しかし、近年の周術期管理・手術技術の進歩により、待機的かつ十分な検査・準備を行うことで、術後合併症率は改善し、現在国内の肝胆膵外科のハイボリュームセンターでは1%以下の死亡率です。
しかし実臨床では待機的ではなく、緊急で膵切除が行われる場合もあります。緊急膵切除は腹部外傷に伴う膵損傷への救済処置として施行されることが多く、その成績は待機的に施行された膵頭十二指腸切除と比較して高い合併症率と死亡率が報告されています。
一方で、外傷性ではないですが、膵頭部およびその周囲の重篤な合併症管理のため、緊急(非待機的)での膵頭十二指腸切除術が選択される場合も少なからずあります。膵頭部周囲の腫瘍性病変による穿孔や出血、術後や内視鏡治療の合併症に伴う出血性・敗血症性ショックなどの病態で非手術的治療ではコントロール困難な場合に膵頭十二指腸切除術が施行されます。
これら非外傷患者における緊急膵頭十二指腸切除術の報告は少なく、最大の報告でも10例程度です。最近システマティックレビューが報告されましたが、それでも総数は66例であり、術後の予後予測の大規模な臨床研究は行われておらず、緊急膵頭十二指腸切除術のrisk & benefitに関してはcase by caseで検討するしかない現状です。一因として緊急膵頭十二指腸切除の頻度は膵頭十二指腸切除の0.3%-2%に過ぎず、大規模症例での検討ができないことが挙げられます。しかし既報のごとく術後合併症は50-80%、死亡率は0-35%と待機的な膵頭十二指腸切除よりもリスクの高い手術になることは明白ですので、システマティックレビューでは、特に穿孔および虚血が原因で緊急手術となった症例で死亡率が高かったと報告されています。しかし、手術前の併存疾患の有無や、正確な患者状態、細かなリスク因子などは明記されておらず、緊急手術の原因や、術前因子などから術後合併症・死亡率のリスクを推測するためのモデルや、手術適応基準の提案が望まれる状況です。
本研究によって国内外の肝胆膵外科ハイボリュームセンターにおける非外傷性緊急膵頭十二指腸切除術の後方視的検討によりその頻度、特徴と、術後短期成績、長期予後を検討します。また、その結果を基に術後合併症リスクを推測するためのモデルを提案できれば、手術適応や、周術期管理の判断の根拠となり、緊急膵頭十二指腸切除術後の予後の向上につながると期待されます。
5.研究の方法
この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。
- 臨床所見(年齢、性別、身長、体重、既往歴、ECOG-PS、原因疾患、感染状況、循環動態、ショック有無、昇圧剤使用有無、発症から手術までの時間、Sepsisの有無、SOFA score、CPIRO score、米国麻酔科学会パフォーマンススコア[ASA-PS]など
- 血液所見(白血球数、ヘモグロビン、リンパ球数、血小板、アルブミン、乳酸、CRP、クレアチン、DIC所見、栄養指標など)
- 術前処置 (輸血有無、保存的治療・内視鏡治療・画像下治療の有無など)
- 手術所見(手術時間、出血量、輸血有無、他臓器合併切除の有無、主膵管径、閉塞性膵炎の有無など)
- 術後成績(術後ICU滞在日数、術後在院日数、合併症、90日手術関連死亡、自宅退院率、90日再入院率、など)
- 術後生存期間
本研究は多施設共同研究であり、共同研究機関の研究対象者についても、上記と同様の情報を取得し、がん研有明病院 肝胆膵外科に送付された後、詳しい解析を行う予定です。
6.個人情報の取扱いについて
研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、がん研有明病院のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同施設の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。 この研究によって取得し集められた情報は、がん研有明病院・肝胆膵外科・副部長・井上陽介の責任の下、厳重に管理されます。また、対応表は送付されず、各研究機関において近畿大学医学部外科肝胆膵部門 主任教授 松本 逸平の責任の下、厳重に管理されます。 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
7.試料や情報の保管等について
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、がん研有明病院・肝胆膵外科において副部長・井上陽介の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。対応表に関しては近畿大学医学部外科肝胆膵部門 主任教授 松本 逸平の責任の下、同様に廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の試料や情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
8.利益相反について
本研究は、研究責任者が所属する診療科の研究資金で実施します。また、本研究の研究者は、「公益財団法人がん研究会利益相反の管理に関する規約」に従って、利益相反委員会事務局に必要事項を申告するものとします。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
9.研究に関する情報の開示について
この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
10.研究の実施体制について
研究実施場所:
がん研有明病院 肝胆膵外科
135-8550 東京都江東区有明 3-8-31
TEL: 03-3520-0111
FAX: 03-3570-0343
研究代表者:
がん研有明病院 肝胆膵外科
副部長 井上陽介
研究事務局:
がん研有明病院 肝胆膵外科 医員 小林 光助
135-8550 東京都江東区有明 3-8-31
TEL: 03-3520-0111
FAX: 03-3570-0343
E-mail: Kosuke.kobayashi@jfcr.or.jp
11.お問い合わせ先
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。
照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
近畿大学医学部外科肝胆膵部門
589-0014 大阪狭山市大野東377-2
TEL: 072-366-0221 (内線3111)
研究責任者:近畿大学医学部外科肝胆膵部門 主任教授 松本 逸平