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食道・胃・十二指腸進行度診断と治療方針

胃がんの手術方法

がんの部分から十分な距離をとって胃を切除することと、近くのリンパ節を一緒に切除する(リンパ節郭清)ことが必要です。がんの出来ている部位やその拡がりに応じていくつかの手術方法があります。また、切除した後にちゃんと食べ物が通るように食べ物の通り道を作る (再建)ことが必要です。

ア.切除範囲
  • (a)幽門側胃切除術
    胃の出口側約2/3を切除する方法です。胃の中ほど~出口近くにできたがんに対して行われます。
  • (b)幽門温存胃切除術
    胃の出口で逆流を防止している幽門輪という部分を切除せずに胃の出口側を切除する方法です。中部に出来たがんで胃の出口から十分に距離がとれるものに対して行われます。
  • (c)胃全摘術
    胃を全部切除する方法です。胃の上部にできた癌や、広い範囲に拡がっているがんに対して行われます。
  • (d)噴門側胃切除術
    胃の入り口側を切除する方法です。胃の入り口近くにできたリンパ節転移のない早期がんに対して行われます。
イ.腹腔鏡下手術
手術を行う手段の一つで腹腔鏡(カメラ)でお腹の中を見ながら、特殊な鉗子(手の代わりになる道具)を用いて手術を行います。今まではどの手術もお腹を大きく開けて手術を行っていましたが、腹腔鏡が開発されてからは腹腔鏡を利用した手術が多く行われるようになってきました。腹腔鏡を使った手術でも今までと同じ内容の手術が可能であり、手術の創が開腹手術に比べて小さくてすみます。そのため、手術後の回復が早い、美容上良い、身体への負担が少ないなどの利点が言われています。その反面、進行度によって出来ない場合もあり、高度な技術が必要であったり、手術時間が少し長くなったり、手術中の所見によっては開腹手術に変更しなければならない場合があるなどの欠点もあります。
ウ.診断的腹腔鏡
術前検査では分からないがんの拡がりを調べるために行います。がんが胃の外壁に出ていないかどうか、腹膜(お腹の内側の膜)への転移や腹腔内洗浄液(腹水やお腹の中を洗った液)の中のがん細胞の有無を調べます。これらがあった場合は手術の前に化学療法を行うことがあります。
エ.姑息手術
がんそのものの治療は手術だけでは難しいが、食べ物が通らなくて食べられない場合(バイパス手術)や、癌からの出血がひどい場合、がんを通じて胃に穴が開いてしまった場合などに症状を和らげる目的で行われます。
オ.胃がんの術後合併症
出血、感染、縫合不全(つないだ部分のほころび)、腹腔内膿瘍(お腹の中の膿のたまり)、膵液漏(強い消化作用を持つ膵液が漏れ出すこと)、肺炎、腸閉塞などがあります。手術前の身体の状態によりこれらの合併症が起こることがあります。
カ.胃がんの術後後遺症
  • (a)ダンピング症状
    胃を切除した後に食べ物が急速に腸へ流れ込むことによって起こる症状です。症状としては発汗(冷や汗)、動悸、吐き気・嘔吐、全身倦怠感(脱力感)などが起こります。食後20~30分で起こる早期ダンピング症状と食後2~3時間で起こる晩期ダンピング症状(低血糖症状)があります。予防方法としては少しずつゆっくりと時間を掛けて食事をすること、食後2時間後に飴などおやつを食べることなどがあります。
  • (b)残胃炎
    残った胃に腸液が逆流することで起こります。完全に予防することは難しいですが、内服薬で症状を抑えることができます。
  • (c)逆流性食道炎
    食道に腸液や胃液(残った胃からも少量胃液が分泌されます)が逆流して胸焼けなどの症状を起こします。食事の取り方に気を付けていただいたり、内服薬で症状を抑えたりします。
  • (d)貧血
    胃を切除することでビタミンB12や鉄分(血液の成分を作るのに必要)の吸収が悪くなることで起こります。特に胃全摘術を行った後に起こりやすく、術後数年経ってから発症します。定期的な採血検査でチェックし、必要に応じてビタミン剤や鉄剤の投与を行います。
  • (e)骨粗鬆症
    胃を切除することでカルシウムの吸収が悪くなり起こります。骨のカルシウムが少なくなって骨がもろくなり、骨折しやすくなります。定期的に検査を行い、必要に応じてカルシウムやビタミンDを投与します。
キ.胃がんの術後食事方法
胃の切除後には食べ物を貯める能力の低下または消失が起こります。そのため食後の膨満感、食欲不振、吐き気、嘔吐などの症状が現れることがあります。これに加えて、たんぱく質や脂肪の吸収が悪くなるため栄養障害になりやすくなります。1回の食事量を少なく、回数を多くします。そして高たんぱく、高カロリーのものをとるように心がけます。

胃がんの化学療法

手術治療は局所治療(その部分だけの治療)になるので、がんの進行度によっては手術治療よりも化学療法を行う方がよい場合があります。その場合、化学療法だけの治療、または手術と組み合わせた治療があります。

  • (a)術前化学療法
    手術に先駆けて行う化学療法を術前化学療法と言います。胃がんの進行度によっては手術をする前に化学療法を行い、がんを小さくし、転移の程度を軽くしてから手術を行うことがあります。当科では術前化学療法を積極的に行っています。がん細胞が腹膜に散っている可能性のある場合手術に先駆けておなかの中に抗がん剤をまきます。すでにおなかの中にがん細胞が散っている場合も積極的に同じような化学療法を行い、効果があった場合は手術を行っています。
  • (b)術後補助化学療法
    手術の後に行う化学療法を術後補助化学療法といいます。おもに進行がんに対して再発の予防を目的に行います。
  • (c)進行・再発がんに対する化学療法
    手術後に再発が認められた場合や手術ができない進行がんにも化学療法を行います。

TS-1という飲み薬の抗がん剤やCDDP、CPT-11、パクリタキセル、ドセタキセルといった点滴での抗がん剤をそれぞれ単独または組み合わせて投与します。副作用はそれぞれ投与する薬剤やその人の体質によって異りますが、一般的には全身倦怠(体がだるくなる)、下痢、吐き気・嘔吐、血球減少(血液の細胞成分が減る)、肝機能障害、腎機能障害などがあります。

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